ドラフツの魅力（２） 「お前はすでに死んでいる」（ケンシロウ）

Blog記事『ドラフツの魅力』で、「ドラフツの魅力は、スピード感溢れ、意外性のあるトリッキーな手筋がそこここに隠れていること」と書きましたが、もう一つ、別の魅力があります。

ドラフツは「取れる時は取らなくてはならない」「多い方を取らなくてはならない」の２つのルールのがあるため、筋に入ったら全く抵抗ができなくなります。技にかかったら、もう逃げられない。抵抗できない。この連続技で相手を翻弄する快感は、一度味わうとたまりません。

コマを捨てる、取らざるを得ない、コマを捨てる、これも取らざるを得ない、コマを捨てる、取るしかない、そうしてショットが決まる....

たとえばこんな例です。

白番です。一見、白黒共に隙のないコマ組みです。

ここで白は意外な手を打ちました。

タダで取られにしか見えません。

黒は取らざるを得ません。「取れる時は取る」ルールだからです。いくら考えても、他の手を指すことはできません。

さらに白はコマを捨てます！

２コマ目のタダ捨てのように見えます！

ルールですから、黒は取るしかないのです。

白が何を狙っているのか？分かりますか？わかればレベルが中級者以上あると自信を持っていただいて大丈夫です。

白は更にコマを捨てます。それも２コマ！これで合計４コマを捨てたことになります。

その上、黒にキングを作らせてあげています！ルールですから、黒は取らざるを得ません。

なんと！白は更にコマを捨てます。これで５コマを捨てたことになります。

黒が取った後の形です。ここまで来ると勘の良い人はショットの通り道が見えてきたと思います。

ショットは、連続ジャンプです。

よく見ると連続ジャンプでキングまで作れる道筋が見えてきました。

初級者の方は、まだわからないかもしれません。

これが最後の捨て駒です。合計６コマを捨てたことになります。

黒が取った後、こういう形になっています。よく見てください。左２列めにある白コマが、連続ジャンプで黒５コマを取れるようになっています。

わかりやすく色をつけておきましょう。

最終的に、

白の捨てコマは６

白が取ったコマは５

で、コマ数だけだと１コマ損していますが、そのかわりキングを作っています。キングはとても強力で、一般的にはコマ２つと同じくらいの力がある感じです。

このショットが決まり、白が有利になりました。

どうですか？白が技をかけた時には、かけられた黒は最終的にどんなショットを決められるのか全く見当がつきませんでした。意外な捨てコマを連続で行い、必然手でショットまで持っていく。

面と向かって対局していると、連続捨てコマの途中で、相手が『技にかかってしまっている』のに気がつく瞬間が分かります。その時、相手が愕然としているのがよくわかります。

「お前はすでに死んでいる」というセリフを心の中でつぶくやいたりすると、快感でゾクゾクすること間違いなしです。（口に出して言っちゃだめですよ。相手が怒るかもしれません（笑））

※このショットは「Coup Napoleon」（ナポレオン・ショット）と呼ばれています。かのナポレオンもドラフツが好きだったようで、部下と対局した時にこのショットをやったことから、そう呼ばれているらいしいです。真偽のほどはよくわかりませんが。